マーガリンは体に悪い?油と脂の違いから、体に良い脂を考える!

良い油?悪い油?健康に良いサラサラ油を見分けるには
ダイエットのために糖質・脂質に気を使っている…体重を減らしたり、肌のコンディションをよくするために、食生活を見直して糖質・脂質に気をかけている人は多いと思います。
しかし、糖分も脂肪も、あなたの体の健康を守るためにはとても大事な“栄養”であることをご存知でしょうか。
身近な油のタイプの違いを知って、賢く健康的に食品の選択をするには、次の5つのポイントを知っておくと便利です!
目次
- 油って本当に体に悪いもの?
1-1. 油の役割 - 油と脂の違いとは!
2-1. なぜ固体の油と液体の油があるのか - 飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いを知って、何の得になる?
- ニセモノ“良い油”にご用心!
- 人間は摂取するしかない油
- まとめ
目次
油って本当に体に悪いもの?
そもそも油は体に悪いものなのでしょうか?
油と聞くと、カロリーが多くて脂肪の原因になりそう…と考える人は多いと思います。確かに、摂取した油のうち、エネルギーとして活用されなかった分は脂肪となって体に蓄積さることがあるので、このイメージはあながち間違ってはいません。
しかし、食べた油は、直接脂肪となって蓄積するわけではないのです。
というのも、油というのは私たち人間の生命維持にはとても重要な栄養の一つなのです。なにも、ビタミンやミネラルだけが栄養ではありません。
油の役割
油の大きな役割は、エネルギーの生成です。食事から摂取した油は、消化器官で消化、体内に吸収されます。
吸収された油は脂肪酸という小さな単位に分解され、それらが体の様々な機能の原動力になる、いわば燃料のような働きをするのです。私たちの体の35~40%のエネルギーは、油が元となっています。
燃料がなければ車は走れなくなってしまうのと同じように、人間も脂肪酸が枯渇してくると体を動かすのが難しくなってきます。人間の体は賢いもので、油を完全に摂取しなくなってもすぐに燃料不足で動かなくなってしまうことはありません。
とはいえ、油を摂取しない期間が長く続くと、健康に様々な変調をきたす恐れがあります。例えば、オメガ3脂肪酸と呼ばれる油などは、心臓病のリスクを低下させる働きがあるとされ注目されています。油の摂取は日常生活ではなくてはならないものなのです。
油と脂の違いとは!
食品の油は大きく分けて「脂」と「油」の2つに分けることができます。この2つの違いって分かりますか?
まず「脂」は、常温で固体状態の油脂の事を指します。
例えば、バターや、豚肉の切り身の油(ラード)などは、常温に置いていても、柔らかくはなりますが、白い個体の性質をとどめていますよね。こういったものは脂と表記します。脂は往々にして動物性の脂肪に多く見られるものです。
となると、「油」は反対に、常温で液体状になる油脂の事を指します。例えばオリーブ油や菜種油などは、常温に置いておいても液状であり続けるので、料理をするときに使いやすいものです。そして、油は植物性のものであることが一般的です。
では、脂と油ではどちらの方が健康に良くない要素を含んでいるのでしょうか。
答えは、動物性脂肪由来である、常温でも固体であり続ける脂です。脂は油と比べて、悪玉コレステロール値を上昇させるなどして、心臓や血管などの循環器系の疾患の大きな原因になる恐れがあるとされています。
となると、常温で液体の油はすべて体に良いかというと、これらの油は大きく3つに分けられ、中でも、サラダ油やオリーブオイルなどの種類は現代の食生活では摂取過多と言われています。
カロリー摂取の面から見ても、油の摂りすぎに注意することは必要ですが、では、摂取すべき油とはいったいどういったものでしょうか。
なぜ固体の油と液体の油があるのか
油脂の性質を説明するときに、もうひとつ覚えておいて損のない言葉のペアがあります。それは、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」という言葉です。ちょっと長い言葉ですが、理屈が分かればこの言葉の意味することが分かると思います。
食事から摂取した油脂は、体内で消化吸収されるときに、より小さな脂肪酸という形に変化します。体内を移動できるようにするための、小さな油の粒々のようなものです。
この脂肪酸は炭素・水素・酸素という、3つの元素の組み合わせで作られています。この時、これらの元素が完全に規則正しく並んでいると、全てが飽和している状態であるということで、「飽和脂肪酸」と呼ばれるのです。
飽和脂肪酸の模式図。規則正しく波打っているのは、元素が規則正しく結合している証拠です。
反対に、これらの元素がところどころ(一か所、あるいは複数個所)で水素の結合が足りていない=飽和していない状態のものを、「不飽和脂肪酸」と呼ぶのです。
不飽和脂肪酸の模式図。元素が規則正しく結合している2カ所が、不規則な並びになっています。
イメージしてみてください。飽和している状態というのは、飽和していないものよりも強固な感じがすると思います。実際、飽和脂肪酸の元素は、より強固な結合をしているので、常温でも解けないような安定した油脂を作り出します。
先ほど書いた定義に当てはめると、常温で個体の油、つまり
脂=飽和脂肪酸なのです。
反対が、安定していない油脂、常温で液体になるような不安定な油脂が不飽和脂肪酸です。
油=不飽和脂肪酸、という事になります。
このことが頭に入っていれば、油脂が常温で固体か液体かを見るだけで、それが飽和脂肪酸なのか不飽和脂肪酸なのかが判別できるようになります。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いを知って、何の得になる?
「さかなさかなさかな~さかなをたべると~」という歌が数年前に日本で流行し、一時、スーパーの鮮魚売り場などでこの曲がよくかかっていたことを覚えているでしょうか。この歌によると、魚を食べると頭が良くなる、といったことが言われています。
これは当時のワイドショーを賑わせた「頭が良くなる油」に秘密があります。
当時、メディアに何度も取り上げられていたので、今でも頭のどこかで覚えている人も多いと思いますが、この「頭が良くなる油」というのは、ドコサヘキサエン酸や、エイコサペンタエン酸といった、青魚に多く含まれるとされる油の事です。
実はこの2つの物質、名前の最後に「酸」と書かれているのでわかりづらいのですが、脂肪酸の一種なのです。
さらに、これら2つの脂肪酸は不飽和脂肪酸に属しています。焼き魚をしたとき、冷蔵庫に入れない限りは、魚の身は液体状の油が付いていますよね。
つまり、魚の油は不飽和脂肪酸なのです。もっと言うと、バターに代表されるような固い飽和脂肪酸と比べて、液体状の魚の油は体に良い油なのです。
また、魚の油のみならず、健康に良いとされ一躍有名になった亜麻仁油やココナッツオイルなども、植物由来の不飽和脂肪酸という事で、常温で液体状態でいます。
ココナッツオイルについては、常温で固体のものを見かけることがあります。しかし、「良い」とされるココナッツオイルの融点(脂が解けて液体になる温度)は22℃程度なので、温暖な気候での常温では液体状態であります。
このように、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の存在を知っておくことで、おおまかに良い脂と悪い脂の見分けがつくようになるのです。
ニセモノ“良い油”にご用心!
しかしながら、物事には例外がつきものです。実は、不飽和脂肪酸であるはずの植物油の中には、飽和脂肪酸のような「常温で固体」で存在する油があるのです。しかも、私たちの生活のとても身近なところに、それらは存在しています。
そのうえ、その油は健康被害のリスクがあると認められていて、アメリカでは製造・使用が禁止されたほど!
その油というのが、マーガリンやショートニングです。マーガリンやショートニングの原料は、植物性由来の油脂です。
マーガリンは使ったことがある人も多いと思いますが、バターに似た風味で、冷蔵庫に入れておいてもバターの様にカチカチに固まることがなく、忙しい朝食でもすぐに使えるので人気のある製品です。
ショートニングは、お菓子作りが好きな人は使ったことがある人もいるかもしれません。常温でも固体状態を保ったままの、白いポマード状の脂です。
また、ドーナツの揚げ油としてもショートニングは大量に使われていますし、その他市販されているお菓子にショートニングは多く使われています。
マーガリンはバターの代用品として使われるために作られたという事情が分かりますが、なぜショートニングが作られるようになったのでしょうか。
実はショートニングも元は不飽和脂肪酸なので、常温では液体のはずです。しかし、液体の脂では輸送の面でとても扱いづらかったため、化学的な処理を施して液体→固体になるようにされているのです。
つまり、不規則に並んでいる脂肪酸の元素に、水素を人工的に添加することで、飽和状態の、より強固な脂肪酸を作り上げているのです。こうした脂肪酸のことを、トランス脂肪酸と言います。
一見して持ち運びやすく、しかも動物の脂よりもヘルシーで安価なショートニングやマーガリンは良いように見えます。
しかし、残念ながら近年の研究で、これらの油脂が心臓病の原因になるという結果が次々と報告されているのです。実際に、食の大国・フランスの生化学の分野においては、トランス脂肪酸は心臓病のリスクがあるとはっきり明言されています。
しかし、現状ではトランス脂肪酸の流通は規制されていないため、町中のスーパーではマーガリンやショートニングを買うことができます。
一方で、心臓病のリスクはトランス脂肪酸によるものだけではないという事も頭に入れておく必要があります。現代人の食生活のうち、脂肪酸の種類よりも問題なのが、塩分や糖質の過剰摂取です。こうしたことを総合的に考える必要もあるのです。
人間は摂取するしかない油
サラサラとした液体状の不飽和脂肪酸のほうが、私たちの体には良いという事を説明してきました。しかし、中には体に良いから摂取するというより、私たちの体内では作り出すことができないから摂取する必要のある油というものもあるのです。
そして、それらはすべて不飽和脂肪酸です。
それらは、日本では一般的にオメガ3、オメガ6脂肪酸と呼ばれているものです。簡単に言うと、これらの脂肪酸は比較的複雑な合成のされ方をするので、植物や微生物の体内でしか作られることがありません。
なので、人間や動物たちは、これらの脂肪酸を野菜を食べたりすることで外側から摂取する以外方法がないのです。
しかし、ありがたいことにこれらの脂肪酸は毎日大量に摂り続ける必要はありません。ごく少量の摂取でも体の調節に大きな効果を発揮するのです。
近年の研究によると、成人で一日当たり2.7gのオメガ3脂肪酸(クルミ油、亜麻仁油など)と、9gのオメガ6脂肪酸(ヒマワリ油など)が必要とされています。
これらの必要量を小さじに置き換えると、前者は1/2杯、後者は2杯なので、かなり量が少ないことが分かります。
これらのカテゴリーに含まれる代表的な油脂としては、ヒマワリ油、菜種油、大豆油、トウモロコシ油などがありますが、これらの油を直接摂取する以外にも、例外的に不飽和脂肪酸を多く含む青魚を食べることで摂取することができます。
まとめ
見すると、太りそう、肌に悪そう、というような悪いイメージのある油。
しかし、油には私たちの健康を維持してくれる大切な役割があるのです。
その油の中でも、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸という2種類を見分けることで、大まかに体に良い油なのかそうでないのかを見分けることができます。
また、不飽和脂肪酸のように体に良いとされる油でも、加工されることによってかえって体の害になる油も存在するので、注意が必要です。
油の種類をしっかりと知って、日々の生活でなるべく体の喜ぶ油を摂取するように心がけるとよいでしょう。
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