菌活で栄養価はアップするけれど…効果に隠れた危険性と注意点!

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発酵でこんなに栄養が増える!発酵食品が体に良い理由とは?

最近、テレビでもスーパーの食品売り場でも、生活のいたるところで目にするようになった「発酵食品」や「菌活」などの文字。今、発酵食品による健康維持が注目されています。

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私たちが元気に生活するために、良い食生活は欠かせません。糖質や脂質の過剰摂取を避けたり、食物繊維の多い食品をとるようにしたり…そういったものの中に、「発酵食品を多く摂取する」という考えがあるようです。

しかし、糖質や脂質を摂りすぎると体に悪い影響を与えそうなのは何となく感覚でわかる気がしますが、発酵食品についてはどうでしょうか。

確かにヨーグルトや納豆などの発酵食品は体に良さそうなイメージがあります。しかし、ヨーグルトと、ヨーグルトが発酵する前のもの、つまり牛乳とはどのような違いがあって、どのような影響を体に及ぼすのでしょうか。

そして、胃は外部から侵入してきた細菌を胃酸で殺す“バリケードの臓器”ですが、ヨーグルトに含まれている乳酸菌たちはここを通過することができるのでしょうか…

今回は、発酵食品がどうして体に良いと言われているのか、という事について調べていきます。

発酵とは

発酵とは私たちの身の回りで日々起きている現象です。なにも、食品に限って起きる現象ではありません。というのも、ある程度の栄養(主に糖)があって、酸素がない状態で、細菌や酵母たちがエネルギーを得ようとして炭酸ガスを発生させる反応が発酵と呼ばれるからです。

微生物たちの生きるためのの活動というわけです。私たち人間は、エネルギーを得るために栄養を消費しながら、酸素を吸って二酸化炭素を吐き出しています。

それと同じようなことを微生物たちもやっているのです。二酸化炭素ではなく、炭酸ガスを排出していますけどね。

そして、微生物たちは私たち哺乳類やその他の動物よりもはるかに小さく(数ミクロンの世界)て、地球上に人間の人口をはるかに上回る数の微生物が存在しているので、日常的にいたるところで発酵という現象が起きているのです。

それが、人間は長い歴史の中でヨーグルトや納豆を作るために、食品産業として微生物の発酵という現象を利用することを考え付きました。これが、今日言われている発酵食品というものです。

ちなみに、微生物のエネルギーの活動が人間に有利だった場合のみ発酵という言葉が使われます。では、人間に有利でない場合、または人間に悪い影響を与えるような場合は何と呼ぶのでしょうか。答えは腐敗です。

発酵と腐敗は、人間にとって良いか悪いかの違いなのです。
ということは、逆に考えれば発酵と名前の付くものは、私たちの体にとって有利であるものととらえることができます。

発酵に使われる菌

発酵に使われる菌には、非常に多くの種類があります。また、発酵に使われる菌たちは非常に個性豊かで、それぞれの特色が発酵食品の味や食感、品質の違いなどを左右しています。

例えば、日本を代表する発酵食品の一つである納豆を作るために使われる菌は、枯草(こそう)菌という、自然界にごく一般的に存在する菌です。

枯草菌という名前から分かる通り、枯れ草などを観察するとたくさん見つけることのできる菌で、もちろん稲を刈り取った後の藁にもたくさん存在しています。

この藁で大豆をくるんだところ、藁に付着していた枯草菌が発酵を開始して、結果的に納豆が誕生しました。

日本の朝の食卓に欠かすことのできない納豆は、こうして枯草菌の活躍によって誕生したのですが、遠く離れたフランスの食事に欠かせないチーズは、また違った菌の活躍によってつくられます。

その日本とフランスの間には、ヨーグルトで有名な国、ブルガリアがありますが、もちろん、ヨーグルトを作るために使われる菌は、納豆やチーズのそれとは違った種類の菌を使うのです。

こうしてみると、私たち人間の食文化というのは、その土地の菌が担ってきた部分が少なからずあるのだという事が分かります。そして、その菌の種類はとても膨大な数になるのです。

では、様々な菌による発酵という現象を利用することによって作り出された発酵食品が、なぜ体に良いのでしょうか。

発酵食品はなぜ体に良い?

発酵食品が体に良い理由。すばり、それは菌が存在するということが1番に挙げられます。
よくヨーグルトのCMなどで、生きたまま乳酸菌が腸まで届く、という言葉を聞くことがあります。

私たちの腸には細菌がたくさん生息しています。ちょっとびっくりするくらいの数の菌が存在していて、腸の菌をすべてこそぎ落とすと、約4kgくらいあると言われているほどです。4kgというと、猫一匹ぐらいの重さがぐらいあります。

この4kgの菌たちは、私たちの腸の中で様々な活動をしていて、良いこともしてくれれば悪いこともしてくれます。これが善玉菌や悪玉菌と呼ばれるものです。

興味深いことに、これらの菌はそれぞれが個別に何かアクションを起こしているわけではなく、とても複雑な相互関係を作り出している場合がほとんどです。

その容態は、まるで人間社会のよう。善玉菌が少なくなれば悪玉菌が幅を利かせるようになったり、菌の世界もなかなか世知辛いようです。

悪玉菌が増加すれば、それが原因となって、ガンなどの生活習慣病を引き起こすことがあるので、私たち人間としてはどうにかして悪玉菌の数を抑えたいところです。その時に必要になるのが、善玉菌たちで、これが発酵食品の中に多く含まれているのです。

また、腸に住む菌の中には、ほかの細胞や神経をターゲットに、様々なシグナルを放出するものもいます。

これによって私たちはお腹が減ってしまったり、血圧が下がってしまったりと、いろいろな生理作用が働くと考えられています。

しかし、その働きにはまだまだ謎な部分が多く、謎が多いがゆえにその全体像を見ると、あたかも私たちの生活リズムは腸の菌にコントロールされている様にも見えてしまうため、腸は”第2の脳”などと呼ばれることがあるほどです。

善玉菌が私たちの腸の環境を健康に保つために必要であることは確かなのですが、問題は善玉菌をどうやって腸まで送り届けることができるのか、という事です。

前述したとおり、ヨーグルトのCMなどで、腸まで届く乳酸菌というようなキャッチコピーを目にすることがあります。

しかし、幸か不幸か、人間の体は外から侵入した菌(もちろん、乳酸菌もバイキンも、大きな括りで言えば同じ”菌”です!)が簡単に体内に侵入できないよう、たくさんのバリア機能を備えています。その最大かつ最強のものは、腸の直前に構えている胃の中での胃酸のバリアです。

実は、口から始まって食道、胃、小腸、大腸、肛門に至るまで、私たちの体は、一本に突き抜ける”チューブ”のような構造になっているのです。

そして、科学で人体を扱うときには、この”チューブ”は、”体の内側“であるとはみなされません。つまり、胃であっても腸であっても、これらの臓器は”体の外側”に面していると考えるのです。

少し複雑な考え方ですが、そういわれてみると、食べ物の様に外の世界から入ってきたものは、この”チューブ”を通って、必要な栄養などを吸収したのち、速やか肛門から体の外の世界に出されます。

となると、この”チューブ”は外界とのコンタクトの多い部分、つまり、細菌などとの接触リスクが多い部分であるという事になります。

そういった理由から、胃や腸など、これらの臓器には細菌の侵入をブロックするために、胃酸やその他のバリア機能を備えているのです。

では、どうして発酵食品に含まれている菌は、胃のバリアを通過できるのでしょうか。
実をいうと、これらの菌は「生きたまま腸まで届く」と言われているのですが、実際に死なずに胃の鉄壁を通過しているかというと、わからないこともあるのです。

その理由は、食品開発者たちがどのようにして菌が生きたまま腸に到達したか調べているのか、その方法を知ることで理解できます。

食品開発者たちは、菌が腸まで届いたかどうかを知るために、被験者に特定の菌が含まれた発酵食品を食べさせます。そして、被験者の発酵食品を食べる前/食べた後に得られた便を分析します。

こうして、発酵食品を食べた後に採取した便の方に、調べたい菌が、発酵食品を食べる前に摂取した便よりも著しく多く存在していれば、この菌は「生きて腸まで届いた」という事になるのです。

一見すると、これは食べた食品に含まれた菌が、文字通り生きたまま胃も腸も通過して便となって出てきたように理解することができます。

しかし、例え細菌が道半ばで死滅してしまったとしても、その発酵食品を食べたことによって腸内環境が整えられ、もともと微量ながら腸に存在していた特定の菌が大繁殖を起こし、結果的に便の中に多く現れたと考えることもできるのです。

この場合、発酵食品に含まれていた菌は生きたまま腸まで届くことはなかったが、間接的に同じ種類の常在菌を増やした、ということになります。

つまり、生きたまま腸まで届いているかどうかというのは、わからない場合があるのです。

しかし、私たちにとって肝心なのは、菌が生きてくれているかどうかという事よりも、その発酵食品を食べることによって体に良いことは起きるのか?という事だと思います。

とても興味深いことに、腸内環境を守るためには、なにも生きた菌だけが重要ではないのです。なかには、死んでいても腸内環境を守るために重要な役割をしてくれる菌もいます。これが、発酵食品が体に良いと言われている2番目の理由です。

例えばヨーグルトに含まれるビフィズス菌は、死んでしまっても、その死骸が腸に入り込むと、腸の表面に存在する細胞が、その細菌の死体に含まれる特定の物質を感知して、それによって免疫効果が上がるという事があります。

さらに、免疫にかかわること以外にも、例えば不要な細胞を体外で排除する働きなども、生きたまま腸にたどり着くことができなかった細菌たちによってコントロールされている可能性があるとして、現在研究が進められているのです。

もしこの働きが証明されれば、私たちの体の不要な細胞(例えば、肌の老化した細胞や、ガンなどの悪性の細胞)が、発酵食品によって大きくコントロールされているという事を意味することになるのです。

死んでもなお、人間の健康に貢献してくれる細菌たち…小さいのに、とっても働き者です。

以上の事から、発酵食品は私たちの腸内環境を整えてくれる善玉菌を、生きたまま、もしくはたとえ死んでしまっても有用な形で摂取することができるので、体に良いのです。

発酵食品とそうでないものは、こんなに栄養価が違う!

細菌が直接、あるいは間接的に私たちの健康に影響を与えることは分かりました。
では、発酵食品自体を見た時、発酵する前と発酵した後で大きな栄養の変化はあるのでしょうか。

牛乳は日本において、戦後から学校給食に出されるなどして、栄養満点の飲み物であるというイメージがあるかと思います。フランスにおいても、有名なカフェ・オ・レ(café au lait)はコーヒー牛乳という意味で、フランス人の朝食には欠かせないものでした。

今でもフランスのおばあちゃんなど、お年寄りの人たちには、朝ごはんに「カフェ・オ・レを飲みなさい!栄養満点なんだから!」と勧められることがよくあります。

確かに、牛乳を構成している物質のおよそ9割は水であることを考えれば、牛乳は栄養が比較的多い飲料かもしれません。

しかし、それでも牛乳が含んでいる栄養はかなり数値的に少ないものであるため、現在では欧米の多くの考えでは牛乳はあまり栄養のない飲み物であると捉えるのが一般的です。

ここに興味深い表があります。これはフランスの国立科学研究所のデータから抜粋したもので、牛乳と、その発酵食品であるヨーグルトとチーズについて、栄養の違いが表にまとめられています。

Difference in nutrition between yogurt and cheese

この表を見る限り、これら3つの食品には違いがあることが分かると思います。

詳しく見ていくと、まずタンパク質はチーズが際立って数値が高いことが分かります。これは発酵したからというより、チーズは牛乳やヨーグルトと比べて水分が蒸発してしまっている→成分が凝縮されているため、タンパク質の数値が高いと言えます。

脂質は牛乳とチーズで同じようなものが含まれているのですが、チーズのほうが圧倒的に数値が高くなっています。理由はタンパク質と同じです。

また、発酵のおかげで牛乳やヨーグルトには存在している乳糖(ラクトース)が、チーズからは無くなります。

糖の中で乳糖が特別に見られている理由は、人間には乳糖不耐症(乳糖を分解することができない体質。乳糖不耐症の人が乳糖を多く含む牛乳を飲むと、おなかが痛くなる。)があるからです。

ヨーグルトに使われる菌は、乳糖を分解することがないか、または分解したとしても極少量にとどまるため、牛乳とあまり違いがありません。

Micro-nutrimentsというのは、微量栄養、つまりビタミンやミネラルの類で、微量で私たちの体の機能を調節してくれている栄養たちです。

ここでも、牛乳・ヨーグルト/チーズで違いがあることが分かります。一般的に言って、牛乳・ヨーグルトよりもチーズのほうが栄養に富んでいます。

また、直接発酵の影響によるものではないのですが、ヨーグルトは製造の過程で味をや食感を整えるために、粉末状の乳を加えることがあります。

これによって、牛乳とヨーグルトを比較すると、ヨーグルトのほうが一般的に栄養価が高くなります。

他にも、発酵による直接的な栄養の変化というものもあります。

例えば、フランスで作られるおよそ50%のチーズはハードタイプ(モッツァレラチーズのように柔らかくなく、水分の抜けたしっかりとした食感のチーズ)なのですが、そのハードタイプのチーズ1gあたり、平均10億ものプロピオニバクテリウムという種類の細菌が含まれています。

彼らのすごいところは、なんと発酵することによって、原材料である牛乳にはなかった新しい栄養を次々と作り出してしまう事です!具体的には、ビタミンB2,B7,B9,B12を作り出します。

この中でもビタミンB12は人間の体内で作り出すことができないものです。

また、腸内では有機酸を放出することによって悪玉菌の活動を抑制(悪玉菌は酸に弱いのです)してくれます。これらの働きは原料である牛乳の時にはなかったものなので、微生物の発酵によって新しく付加された価値と言っても良いでしょう。

上手な菌活をしよう

巷に多く溢れている「菌活」という文字にひかれて、多くの発酵食品を日常の食生活に取り入れてみたいと考える人は多いと思います。

実際、上で書いたように、発酵食品は、その原料であるときと比べると、栄養的によりリッチなものになることが多く、また、発酵食品に含まれている微生物を直接摂取することで、腸内環境を健全に保つことが期待できます。

しかし、こんなに良いことだらけの発酵食品にも、欠点があります。それは、発酵食品のなかには、塩分が多く含まれているものが少なくないという事です。

例えば、牛乳とチーズを例にとってみると、チーズのほうが塩分含量が多いことは明らかです。

これには、発酵食品を作るには長い時間(数時間から数年!)を要するので、その間に食品が腐らないように塩分を多く使って保存がきくようにしたという歴史があります。

つまり、発酵食品を多く食べると、塩分過多になってしまう恐れがあるのです。

塩分過多というのは、現代の私たちの食生活においてかなり深刻な問題で、生活習慣病原因の一つにも挙げられているものです。

健康を求めて多く摂取した発酵食品によって、塩分過多になってしまい、生活習慣病になってしまった…なんて本末転倒なことにならないように、是非注意したいところです。

それでも発酵食品をなるべく多く食べたい!という人は、最近は各食品メーカーから減塩タイプの発酵食品が販売され始めているので、なるべく塩分の少ない製品を選んで使うと良いでしょう。

また、一回の食事のトータルの塩分を減らすために、他のおかずを薄味にするなどして、バランスをとることも大切です。

また、日本の伝統的な食文化というのはとても優れていて、普段の調味料にも発酵食品が隠れて多く使われています。

例えば、みそ汁に使われる味噌、ちょい足しで旨みがアップする塩こうじ、夏に美味しい野菜のぬか漬けや、新年には欠かすことのできない甘酒など、日本食をよくよくみてみると、いろんなところに発酵食品が隠れているのです。

こうした基本的な食品から、まずは日常の食事に取り入れていくとで、もともとの食生活を大きく変えることなく、健康的に発酵食品の摂取量を増やすことができます。

まとめ

日本をはじめ、世界にはたくさんの発酵食品が存在しています。発酵食品は、私たち人間の、より長期の食品保存と、より健康的な食材を求めて確立した、一つの歴史の集大成と言えるものです。

その発酵食品の効果については、さまざまな科学的な見地から効果が立証されてきていて、近年の発酵食品ブームへとつながっています。

発酵食品を作り出す微生物はたくさん存在しているので、それら一つ一つの特徴を調べることは無理でしょう。

しかし、発酵という言葉は、元来人間の健康に有利なものであるという事を意味しているものなので、その言葉の意味に当てはめれば、発酵食品というのは基本的に私たちの体に良いものであるという事になります。

しかし、塩分の問題など、日々の食生活に取り込む際には気を付けなくてはいけないことがあるのも確かです。

発酵食品は、菌の力によって原料が変化した、ある意味魔法のような食べ物です。発酵食品を上手に日常生活に取り込むことによって、はじめて体の喜ぶ「菌活」ができるようになるのです。

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