代謝がいい人、いくら食べても太らない?

ダンベルとタオル

代謝と消費エネルギー

いくら食べても太らない人、いますよね。あの子は代謝がいいから!なんてよく言いますが、そもそも代謝ってなに?

代謝が良いと太らないというのは本当なのでしょうか?

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目次

  1. 代謝が良いってどういう意味?
    1-1. 1日の消費エネルギー
    1-2. 基礎代謝を上げるには
  2. 遺伝による代謝の差
  3. 女性はやせにくい?
    3-1. 体重が軽ければ消費エネルギーは少ない
    3-2. 女性の方が筋量が少ない
  4. 運動による消費カロリー
    4-1. 基礎代謝を高めるだけでやせることはできるのか
  5. 太らないのは食事自体にエネルギーを使っている?
    5-1. 食事による、太る人と太らない人の差
  6. 活動代謝を大切に
    6-1. 日常生活は1時間で100キロカロリー
    6-2. デスクワークの消費カロリー
  7. まとめ

代謝が良いってどういう意味?

よく燃費がいいとか言いますね。食べたら食べただけエネルギーとして消費する。よく汗をかいて発散する。だからあの人は太らないんだ。

でも、エネルギーを作り出す経路はどの人も一緒で、大きく解糖系と、TCA回路(クエン酸回路)の2種類しかありません。

では代謝がいい人というのはこのエネルギーを作り出す回路の性能が優れているということなのでしょうか。

1日の消費エネルギー

まず、人は1日にどの位カロリーを消費するものなのかを知っておきましょう。

一般的な成人が1日に必要なエネルギーは女性で1200kcal、男性で1500kcalと言われています。食物が生み出すカロリーは、1gのタンパク質、炭水化物につき4kcal、脂質は9kcalを生み出します。ご飯1杯は250kcalありますので、男性がご飯だけで1日に必要なカロリーを摂取するなら6杯分ですね。

このようにして食事でえられたカロリーつまりエネルギーが何に使われているかというと、基礎代謝に60%、食事で使うエネルギー10%、身体活動に使われるエネルギーが30%です。

  • 基礎代謝によるエネルギー消費…60% (女性:720kcal 男性:900kcal)
  • 食事に伴う生理的エネルギー消費…10% (女性:120kcal 男性:150kcal)
  • 身体活動によるエネルギー消費…30% (女性:360kcal 男性:450kcal)
基礎代謝によるエネルギー消費…60%

これが今回のテーマですね。基礎代謝量の定義は、心身ともに安静な状態の時に生命活動の維持に消費される必要最低限のエネルギー代謝量、のことを言います。

つまりはなにもしなくても勝手に消費されているエネルギー。この基礎代謝でいっぱいエネルギーを消費してくれれば肥満になることはないじゃないか!ということです。

この基礎代謝とはなんぞや?というところを後半で深堀りしていきます。

食事に伴う生理的エネルギー消費…10%

人が食事をするときは物を租借したり消化液を分泌したり、食べ物を次の器官へ送り出したりと、体内では様々な運動が行われており、それに伴いエネルギーを消費しています。

身体活動によるエネルギー消費…30%

これは体を動かすときに消費しているエネルギーですね。スポーツをしている人はこの消費の比率はもっと高くなりますし、1日中家でぼーっとしていればほぼ0になります。

この身体エネルギーは単に運動するときに限らず、日常生活で消費しているエネルギーも含みます。後述しますが、料理をしたり掃除をしたり買い物に行ったりと、実は気づかぬところで意外とカロリーを消費しています。

基礎代謝を上げるには

エネルギーを何に使うかといえば筋肉を動かすことに使います。たとえば心臓を動かしたり肺を動かしたり、汗をかいたり、寒い時はぶるぶる体が震えたりするのも、生命維持活動としてエネルギーを消費しており、これらを基礎代謝というわけですね。

人のエネルギー生産はどこでされているか、それはミトコンドリアという細胞の中にある小さな小さな器官の中で行われています。

この小さな細胞に、がんばれ~、いっぱいエネルギーを作り出せ~と言っても、エネルギーというのは、どの栄養素1分子からエネルギー○分子を生成する、と科学式で決まっています。

なので基礎代謝を上げるにはエネルギーを使用するミトコンドリア、しいては細胞の量を増やすこと、それはつまり、筋肉の量を増やすことです。

しかし、ここで疑問が出てきますね。代謝が良くて太らない人ってなんだかみんな痩せていて、そんなに筋肉あるの?という人に多かったりしませんか。

遺伝による代謝の差

確かに遺伝による太りやすさの差も存在します。それは倹約遺伝子と呼ばれるもので、倹約遺伝子型の人とそうでない人はエネルギーの代謝は日に200kcal前後の差が出ます。

本来、太ることは飢餓に備えることであり、脂肪を蓄えるための倹約遺伝子はそのために備わったむしろ歓迎されるべき能力なのですが、現代での扱いはまるで正反対のものですね。

女性はやせにくい?

同じ運動をしていても女性は脂肪が落ちにくいという話を聞いたことがあるかもしれません。

これは言葉の解釈によるものですね。

体重が軽ければ消費エネルギーは少ない

運動の強度はMETsという単位で計られます。そして、各運動における消費カロリーは

消費カロリー(kcal)=1.05×METs×時間(h)×体重(kg)

で計算されます。つまり、体重が重ければ重いほど、消費カロリーは増えます。それはそうですね。重たい筋肉を運んで歩くわけですからその分消費されるエネルギー量は多くなります。

一方で、体重が軽ければその分消費カロリーは少ないですから、同じ強度の運動を同じ時間したとすれば、体重の軽い女性の方が消費エネルギーが少なくなります。

が、よくよく考えてみれば体重の軽いということは体に持っている脂肪自体も少ないので、体全体の中で脂肪を燃焼する割合でいえばどちらも同じになりますね。

女性の方が筋量が少ない

筋量においてはやはり男女間では差が出ます。筋肉の量はやはり女性の方が少なく、男性の80%ほどしかありません。筋肉の量はエネルギーの消費量と直接関係しているので、その点で言うと筋量の少ない女性はエネルギーを消費しづらいと言えます。

ただ、もし同じ体型で同じ筋量の男女がいたとすれば、エネルギー消費量にそこまでの差は出ないでしょう。

運動による消費カロリー

女性の場合、1日の消費カロリー目安は1200kcalですが、そこから計算すると、運動での平均的な消費カロリーは360kcalとなります。これを運動で上回れば、順調にやせられる、というわけですね。では360kcalの運動とはどのくらいのものでしょう。

下記は厚労省のデータから、消費するカロリーの量を計算したものです。

【体重が40kg】※各運動を1時間行った場合

  • 水泳、ランニング …378kcal
  • バスケットボール、サッカー、テニス、スキー、ジャズダンス、エアロビ …252kcal
  • ウォーキング、自転車、ゴルフ、卓球 …168kcal
  • ボーリング、バレーボール、筋トレ …126kcal

【体重が60kgの人】※各運動を1時間行った場合

  • 水泳、ランニング …500kcal
  • バスケットボール、サッカー、テニス、スキー、ジャズダンス、エアロビ …400kcal
  • ウォーキング、自転車、ゴルフ、卓球 …250kcal
  • ボーリング、バレーボール、筋トレ …200kcal

※運動の強度によって差が出ます。参考までにお考えください。

水泳1時間で1日分の運動分の消費カロリーを使い切ります。2時間やると足が出て、簡単に言えば、その分やせる可能性があります。

エネルギーを生み出すミトコンドリアは筋肉に多く存在しますが、その中でも特に遅筋と呼ばれる赤色の筋肉に多く分布します。これは有酸素下で使われる筋肉であるため、エネルギー消費には有酸素運動が効果的であるのです。

筋トレの消費カロリーが少ないのは、有酸素運動ではなく瞬発的な無酸素運動だからです。このときには速筋といって白色の筋肉がメインで使われます。

しかし、筋トレは消費カロリーが少ない代わりに、筋肉を壊すことで、新たに筋肉が再構築されやすい状態を作り出します。(2日間くらいこの状態は続きます。)

基礎代謝を高めるだけでやせることはできるのか

もし運動ではなく基礎代謝を高めることのみで消費カロリーを上げようと思ったらどうするか。

まずは単純に筋量を増やせばいいのでは?というところですね。では、筋肉のある人とない人では基礎代謝にどれだけの差があるのでしょうか。

女性の場合、1日の消費カロリーは1200kcalです。基礎代謝は全体の6割ですから760kcalを消費してくれることとなります。

某TV番組の調査では、たとえばこの基礎代謝で250kcal(ご飯一杯分)多く消費してくれるように筋量を増やしたい場合…

8.7kg!筋肉を増やさなくてはならないそうです。

ダンベル3個分くらいですかね…。基礎代謝を上げてなにもせずともやせる体になる(つまり1200kcal消費されるようにする)にはこれの5倍、40kg以上の筋肉の増加が必要です。…不可能ですね。

そもそも基礎代謝では主に内臓で消費されているエネルギーですから、上記の筋肉を内臓部分でつける必要があります。ともかく現実的ではありませんね。

太らないのは食事自体にエネルギーを使っている?

さて、基礎代謝でやせる体になることは難しい。運動すれば痩せるのは当たり前。

では、「食べても代謝が良いから太らない」の根拠となる残された可能性は食事によるエネルギー消費です。

食事をすると、食べ物を咀嚼し、胃では胃液が分泌され、食べ物を次の器官へ送り出すために消化管は絶えず蠕動運動を続けます。

この時消費されているのが食事に伴うエネルギーですね。体が熱くなって汗が出てきますが、エネルギーが消費されている証拠と言えます。

代謝がいいイメージのある人は、その人がよく汗をかくからかと思いますが、それは特に食事をしている時ではないでしょうか。

食事による、太る人と太らない人の差

このように食事から消化中もエネルギーは消費され続けているのですが、この間に消費されるエネルギーを食事誘発性熱産生(DTI)と言います。

食事において太らない人というのは2つの理由が考えられるかと思います。

1つは今回取り上げているように消化においてエネルギーを多く消費するために太らない場合、もう1つは胃下垂であったり腸の状態が悪く栄養が十分に吸収されないままに排出されてしまっている場合です。

栄養が正常に吸収されていない場合

後者はおそらく見た目で判断できるはずです。なぜなら、栄養が吸収されていないことすなわち、太らないだけでなく必要な栄養素まで摂れていないからです。

そういった人は肌質が悪かったり、顔色が悪かったり、疲れやすかったりします。便秘など体の不調に悩まされている人も多いはずです。胃下垂は太らないと言われますが、そういった不調による恩恵というものは、その分デメリットも大きいものです。

食事によるエネルギー代謝を高める

一方食事によって問題なくエネルギーを消費している場合、この食事によるエネルギー代謝は高めることができます。

それは単純に内臓を健全に働かせることです。そこで大切なことが、ストレスフリーであるということ。食事をすると自律神経が興奮状態からリラックス状態へと変化するので、それを妨げないことが大切です。

食事の際にしっかりとリラックス状態に切り替わっていることで、人は消化機能を高め、胃腸の働きを活発にしたり、消化液の分泌機能を正常化したりしています。

ストレスによって胃がむかむかしたりしますね。これは消化機能がうまく働かず、胃に長く食べ物が留まったり、無理に消化させようと消化液を分泌しすぎたりするためです。こうなるとせっかく食べたものも栄養を消化できないまま排出されてしまいます。

同じように、腸や肝臓に不調があったりすると、食事によるエネルギー消費は停滞してしまうことになります。

こんな調査があります。食事~消化中に消費されるカロリーが食事誘発性熱産生(DTI)ですが、夜型の生活を送っている人は昼型の人の4/3のエネルギーしか消費しないというのです。

睡眠リズムは自律神経の切り替わりと深く関係していますから、自律神経のかかわりによってエネルギー消費に個人差が現れることの裏付けになりますね。

噛むことの大切さ

また、よく噛むことも大切です。前述の消化に良い影響を与えることももちろんですが、噛むこと自体エネルギーを消費することになるからです。

みなさん学校に通っていた時は、食べ物をよく噛むようにと言われたことかと思います。しかし、大人になってもそれを意識している人は数少ないのではないでしょうか。

噛むことはほかにもさまざまなメリットがあり、改めてその大切さを見直すいい機会かもしれません。

活動代謝を大切に

基礎代謝の意味を知れば、それは特別な能力というわけではなく、むしろ食事で消費するエネルギーであったり、食べても太らない人は別の理由があります。

遺伝の影響はありますが最大でも200kcalと運動で全然カバーできるくらいのものです。

もう一つ大切なことはやはり運動、スポーツをするまで行かずとも、体を動かすことによるエネルギー代謝は生活の中で大きな割合を占めています。そういった日常の活動の中の運動でのエネルギー消費は活動代謝と呼ばれます。

以下、食べても太らない人は、気づかないところで生活の仕方に差があるのです。

買い物をネットスーパーで済ませる人と近くのスーパーまで買い物に行く人、週1で部屋の掃除をする人と月1でする人、休みの日に家でDVDを見る人と散歩がてらカフェに本を読みに行く人。

そんなふとした習慣の違いが、実はエネルギー消費と深く関わっています。ポイントはこの活動消費を意識して習慣化することです。

【体重が40kgの人の場合】

  • 子どもの世話40分、デスクワーク1時間 …80kcal
  • 料理30分、読書1時間、普通歩行30分 …50kcal
  • 床掃除20分、お風呂30分、自転車15分、階段の昇り10分 …40kcal
  • お化粧20分、洗顔+髭剃り+歯磨きで計20分 …30kcal

【体重が60kgの人場合】

  • 子どもの世話40分、デスクワーク1時間 …120kcal
  • 料理30分、読書1時間、普通歩行30分 …80kcal
  • 床掃除20分、お風呂30分、自転車15分、階段の昇り10分 …60kcal
  • お化粧20分、洗顔+髭剃り+歯磨きで計20分 …50kcal

※それぞれ1つの作業につき右辺のエネルギーを消費します。子供の世話なら40分で120kcal。

日常生活は1時間で100キロカロリー

日常生活では1時間あたりに直すと歯磨きも入浴もお化粧もだいたい同じくらいのカロリーです。体重が40kgの人で100kcal、60kgの人で150kcalです。

主婦のかたの生活を想像して計算してみると、子どもの世話40分、買い物(普通歩行)30分、料理30分×2、読書1時間、床掃除20分、お風呂に30分だったとして、こんな生活を続けていれば、560kcalと1日の目安を超える運動エネルギーを消費しています。

デスクワークの消費カロリー

デスクワークの場合は日常生活で使用するカロリーの0.75倍程度のエネルギー消費にとどまります。体重40kgの人で75kcal、体重60kgの人で115kcal。

それでも思ったよりエネルギーは消費していますね。8時間デスクワークをしていれば800kcal近くは消費しているわけなんですが…。やはりキッチリ働いていても太るのは、間に間食をしてしまったりジュースを飲んでいたり、食の影響の方が強いようです。

まとめ

調べてみると、日常でもエネルギーの消費は思った以上に大きいものでした。

ただ、逆に日常で思ったよりもエネルギーを消費していたんだな、あれ、なんで太っちゃうんだろう…と思った人もいたはずです。そういった人は痩せられない原因は他にありそうですね。それは言うまでもなく食生活、これは想像以上に影響力を持っています。

日常でちゃんとエネルギーを消費しているのになぜ太ってしまうのか、日常の食生活に関する関連記事もぜひ目を通してみてください。

厚労省の統計でもは肥満者は健常者と比べて立った状態での運動に150分もの差があると言われてます。

積極的に運動するようにするのは忙しい生活の中ではなかなか難しい、でも無意識のうちに運動と同じようにカロリーを消費している「日常生活」という活動代謝を積極的に増やすこと、それはそんなに難しいことではないはず。

週に1度は部屋を一通り掃除する、毎日お風呂にゆっくりつかる、食器は自分でかたづけて皿洗いまでしっかりやる。そういった節度のある生活は自然と健康的な生活リズムを作り出します。

また、その日常を長時間行える機会があれば、「しめた!」と思えるようになったらと良いですね。別に急ぐ必要はない、むしろ急がない方が良い。休みの日は洗濯ついでい布団を干して、買い物もゆっくり楽しみながら、通勤は早めに出社して、すこし近くの公園で読書してみたり。

なにごともゆっくり時間をかけて、ストレスにならないよう気持ちよく、楽しくできるときっと肥満は解消されるはず。

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