動脈硬化って何?心疾患から老化、肌荒れまで、血管を大切にするべき理由とは

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動脈硬化から人の体を考える

動悸、息切れ、毎日の仕事に追われ気づくと昔にようにいつも健康いつでも元気とはなかなか言えなくなってきます。血管は全身をめぐりからだの隅々まで血液を運びますが、同じように歳をとっていきます。

老化が顕著に投影される循環器系、症状の代表格である動脈硬化について、動脈硬化と聞くと大げさに聞こえますが、実は誰にもそんなに遠くにあるモノではありません。

今回はこの動脈硬化についての誤解や偏見を紐解きながら、原因と、動脈硬化と付き合ううえで何が大切かを調べ、解説してみます。

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目次

  1. 動脈硬化とは
    1-1. 動脈硬化の起こるメカニズム
  2. 動脈硬化の対処法・予防法

  3. 動脈硬化とコレステロール
    2-1. コレステロールはもともと有害な物質ではない
    2-1. 肥満とコレステロールの関係

  4. 静脈硬化はないの?
  5. 動脈硬化を抑えるためには
    4-1. 血圧を適正値に保つ
    4-2. 喫煙を控える
    4-3. 食生活:超悪玉菌を増加させる「脂肪」をとりすぎない
       …飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
    4-4. 食生活:良いコレステロールバランスを保つ
       …血圧を適正に保つ食事
       …超悪玉菌を増加させる「脂肪」をとりすぎない
       …良質な油分であるオメガ3
       …アディポネクチンは大豆が生成を促す超善玉物質
  6. まとめ

動脈硬化とは

動脈硬化は特別な人に起こる症状ではありません。実はタネとなる異変は生まれた直後からほぼすべての人が持っており、成長とともに進行しています。

動脈硬化は誰しもが持っている病気、ではなく「症状」なのです。「人は血管とともに老いる」とも言われていますが、動脈硬化はまさにそれを体現していると言えるでしょう。

動脈硬化は硬化と名がついていますが最初の症状は、血管の壁の中に異物が侵入、それを白血球が退治、それによって生じる、粥状突起、つまりおかゆのように柔らかくはれ上がる症状から始まります。

ここから血管を圧迫、血が染み出したり破裂したりすることで甚大な病気を引き起こします。

すなわち動脈硬化とは循環器系の病気全般を引き起こすタネとなるものなのです。

動脈硬化が大きな原因とされる脳血管、心疾患を合わせるとそれだけで日本人の死因原因の3割を占めます。循環器系の病気はこと老年期に入るとがんの死亡率を上回る、まさに血管は体の老化とともにあり、自身の寿命を投影していると言えますね。

動脈硬化の起こるメカニズム

血管は外膜、中膜、内膜の三層構造でできています。

一般に言われる動脈硬化は内膜が傷つき悪玉コレステロールが侵入、それに対し白血球が対応し、死骸となって血管内に粥状(ドロッとした粘状)に残り血管を圧迫することが原因となります。

それらは血栓を作り血流をストップさせ、血栓によって固まった血管が破裂することで深刻な病気、症状を引き起こします。

3種類の動脈硬化

動脈硬化は発生する場所、原因から大きく3つに分類されます。

  • アテローム性動脈硬化
  • 細動脈硬化
  • メンケルベルグ型硬化(中膜硬化)
アテローム性動脈硬化(粥状動脈硬化)

一般的に動脈硬化といえばこのアテローム性動脈硬化のことを指します。大きな動脈や中間サイズの動脈の内壁で起こります。冠動脈や脳血管 心臓血管系で発生したものは大きな危険を伴うものです

細動脈硬化

アテローム性動脈硬化と発生する場所が異なりごく細い動脈に見られます。脳や腎臓、目などで起こりやすく、老化、高血圧や糖尿病が原因と言われます。外膜、中膜、内膜の3層、要するに血管の壁自体がもろくなり、血液の中の成分が漏れ出した反応で硬化します。

発生場所と発症過程は若干異なりますが、原因は老化、高血圧とアテローム性と同様で動脈硬化といえば一般には先述のアテローム型動脈硬化を指します。

メンケルベルグ型硬化(中膜硬化)

これは原因が少し異なり、血管の内膜ではなく中膜にカルシウムが溜まり硬くなる(石灰化する)ことで起こります。中膜で発生するためそのまま血管壁が破れることもあります。大動脈や首・脚・腕の動脈で起こり、感染症や加齢現象が要因と言われています。

動脈硬化の対処法・予防法

動脈硬化の原因は血管の老化と形容しましたが、体の老化を進める生活をすれば動脈硬化も進行します。

主な原因と言われているのは

  • 高血圧
  • 高脂血症
  • 喫煙
  • 肥満
  • 糖尿病

ここでも高血圧が出てきましたね…。
高血圧はサイレントキラーとも呼ばれ無症状で進んでいく体の異変です。やはり病気の元を断つにはこいつをやっつけなければいけませんね。

動脈硬化とコレステロール

動脈硬化のキーワードと言えばみなさんご存知「コレステロール」ですね。コレステロールの取りすぎはよくない!というのは周知のことかと思いますが、なんでダメなのか知っていますか?コレステロールは脂肪を消化するのを助け、動脈硬化を抑制する働きがあります。

え?コレステロールを取ると太るんじゃないの?と思われる方もいるかと思います。

コレステロールは動物性脂肪に多い、要するに赤いお肉をたくさん食べるとコレステロール値も増加しますから、それがこういった誤解のもとになったと思われます。

ただこれ自体にも誤解があって、実はコレステロールは体内で生成されるものが主であり、体外から摂取するものは全体の3分の1程度です。

そのため、食に気を使うことももちろん大切ですが、それ以上に体内の環境、健康状態、生活習慣によるものが大きいと言えます。

コレステロール=中性脂肪と思われがちですがこの2つは実はまったく異なる、それどころかコレステロールは逆に、脂肪を消化する胆汁酸の生産を助けています。ではなぜコレステロールが体に悪いような言い方をされるのでしょうか。

コレステロールはもともと有害な物質ではない

コレステロールはそれ自体が悪いような言い方をされますが実はそうではありません。

コレステロールの役割は

  • 細胞膜の構築や維持に必要、膜の流動性(粘性度)を安定にする
  • コレステロールは(脂肪の消化を助ける)胆汁酸の産生を助ける
  • ビタミンA、D、EおよびKなど脂溶性ビタミンの代謝を助ける。
    ※ビタミンDの生成にはさらに紫外線が必要。
  • 脳の神経細胞伝達の絶縁体としての役割も果たす
  • いくつかの研究によるとコレステロールは抗酸化剤としての作用を持っている

というわけで体に必要な物質であるコレステロールですが
体の各部分に運ばれるためにはそれ単体では移動することができません。これらは血液中を流れるタンパク質にくっつくことで移動していきます。

血液中を流れるタンパク質?おやっ、タンパク質って体を構成している成分じゃないの?と思われた方もいらっしゃるかと思います。

タンパク質はからだを構成している構造タンパク質ともう一つ、機能タンパク質というものがあり、消化したり物を運んだり化学反応に関わる働きをしています。

タンパク質とくっつくときにコレステロールの濃度に差が出るのですが
この濃度の違いでコレステロールの役割は変わってきます。そしてその役割によって悪玉とか善玉とか言われたりするわけですが…

悪玉コレステロールとは

タンパク質にくっつくときにコレステロールが濃くなったもの、つまりはタンパク質の割合が低いものですが、低密度リポタンパク質(LDL)と呼ばれます。これらは先ほど挙げたようなコレステロールの有益な効果を期待して末梢神経まで送られていきます。

実はこれが悪玉コレステロールと呼ばれるものなのですが、これだけみるとなぜ悪玉なのか理由がわかりませんね。

善玉コレステロールとは

一方、善玉コレステロールは高密度リポタンパク質(HDL)、タンパク質の密度が高いので、コレステロールの値はそこまで高くありません。

この善玉くんは末梢神経に過剰に蓄積した悪玉くんを肝臓に運ぶ運搬係としての働きがあり、結果として動脈硬化を防ぐ機能をするので善玉と呼ばれます。

コレステロール(悪玉)はもともと必要とされて各所に届くのに、必要以上にたまり過ぎたら別のコレステロール(善玉)によって運ばれ破棄されていくというわけです。

そして運ばれる先は肝臓で、ここでコレステロールは分解されるのですが
この時運ばれてきた悪玉くんが酸化・糖化などしてしまっているとうまく分解されず、血中に漂い続けます。

そしていずれ血管の傷ついたところから壁の中に侵入、血管を肥大化させ動脈硬化を引き起こす原因になるのです。

肥満とコレステロールの関係

コレステロールは肥満と合わせ話されることが多いですがコレステロールと脂肪にはどのような関係があるのでしょうか。

まず、悪玉コレステロールはコレステロール濃度の高いタンパク質です。

ここで考えるのは粒子の大きさです。悪玉くん、コレステロール濃度が高いタンパク質ですが形の大きいものと小さいものがあり、特に小さいものは血管の壁に侵入しやすく、名前を聞くと大げさだなと思われるかもしれませんが、「超悪玉コレステロール」と呼ばれています。

侵入した小さな粒子を追って血管の壁に入った白血球は中で超悪玉くんを処理し膨らみますが、侵入経路が小さいために再び血中に戻っていくことがなかなかできません。そのため壁の中に閉じ込められ、血管を肥大化、動脈硬化を引き起こす大きな要因となります。

脂肪とコレステロールは実は血中をセットで運ばれています。大きさの同じ船に乗っていると考えてください。

脂肪の量が多いと悪玉くんはその船に乗るために粒子を小さくしなければいけません。脂肪が増えると相反して粒子の小さい超悪玉くんが多く生成され、その結果動脈硬化につながる危険な要因となるのです。

静脈硬化はないの?

これはないわけではないですが、非常に少ないです。理由としては血圧が低いため血管の壁が傷つきずらいからであり、また静脈の血管は壁が薄く悪玉コレステロール、白血球が侵入し沈着する余地がないことも関係しています。

人の至適血圧は最高血圧で120mmHg、最低は80mmHg、これは動脈の血圧を表すものですが、大静脈圧は約15mmHgと動脈の7分の1程度の血圧しかありません。

動脈硬化を抑えるためには

では何が動脈硬化を抑えるためには何が重要なのでしょうか。
血管の傷から悪玉コレステロールが侵入するメカニズムを考えてもわかるように

  • 血管を傷つきにくくする
  • 悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす
  • 超悪玉コレステロールを作る要因となる脂肪を減らす

この3つが大切です。

血圧を適正値に保つ

血圧が高いとそれだけ血管に負担がかかり、悪玉コレステロールが血管の壁に入り込むきっかけとなる傷を作ってしまいます。

何せ血圧はたとえば血管と同じ太さのシリンダーを立てたとして水を2m近くも押し上げる力を持っていますから、これにされに圧力をかける高血圧という症状は非常に危険なものです。

血圧を適正値に保つために塩分を控える、適度な運動をする、アルコール摂取量に気を使うなどの配慮が必要です。

喫煙を控える

悪玉コレステロールはそれ自体が悪いものではなく、酸化することで肝臓で吸収されなくなるため悪玉と呼ばれます。この酸化に拍車をかけるのが喫煙による活性酸素の増加です。

また、タバコを吸うと血管が収縮するため、血圧が上がり血管への負担も当然高くなります。吸うなとは言わないまでもやはり喫煙はできるだけ控えましょう。

食生活:良いコレステロールバランスを保つ

コレステロールは全体の3分の2が体内で生成されているとはいえ、摂取する食べ物にも当然気を使う必要があります。

血圧を適正に保つ食事

動脈硬化は血圧と密接に関連していますから、血圧を適正値に保つ食事がそのまま有効です。食塩の量に気を遣い、野菜果物などカリウムの多いものを積極的に食べましょう。

超悪玉菌を増加させる「脂肪」をとりすぎない

脂肪の増加は粒子が小さく血管内膜へ侵入しやすい超悪玉コレステロールを増加させる要因となります。特に赤い肉は悪玉コレステロールを増やすため、食べるのであれば鶏肉がおすすめです。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

覚えておくとよいのはオリーブオイルやなたね油などの固形化しない油(不飽和脂肪酸)は善玉コレステロールを増加させるということです。一方、食肉など常温で固まる油(飽和脂肪酸)は悪玉コレステロールを多く作ります。

良質な油分であるオメガ3

中でもオメガ3と呼ばれる油、これは油の成分の結合の形から区別されて呼ばれるものですが、「DHA」「EPA」「α‐リノレン酸」等に該当します。

善玉として中性脂肪やコレステロール値を抑制し、血管を柔らかくします。月経前症候群(PMS)の緩和、冠動脈疾患に効果があることが知られていますが、光や空気、熱で酸化しやすいため鮮度、保存方法には気を使う必要があります。

食品では青魚、えごま油、亜麻仁油、チアシードなどに含まれます。

この成分は寒く過酷な環境にもかかわらず、野菜も少ないなか青魚を食べることで循環器疾患の少なかったエスキモーやイヌイットの食生活から発見されたものです。

こういった寒地では、アザラシやシロクマもとてつもない脂肪を含んでおり、それを食していた現地民は健康とはかけ離れた食生活をしていました。

一方でそのアザラシやシロクマは、冷たい海でDHAなどのオメガ3を多く含んだ青魚を食べていたため、栄養価の高すぎる食生活でも、動脈硬化の発症を我々より低く抑制していた大きな要因と考えられています。

これについては臨床データもあり、オメガ3の効能は科学的にも広く認められています。

オメガ3は現代人に不足しており、必須脂肪酸、つまり体内で作ることができず食物から摂取することができないものです。血液をサラサラにするために注目してみると良いでしょう。

ちなみにオメガ6(ゴマ油など)、オメガ9(オリーブオイルなど)もありますが、これらは市場に多くあり、一般的に摂取過多となっています。

市販のものもおすすめはしますが、オメガ3は一般の植物油、ごま油、オリーブオイルなどと違い、光や空気、熱によって非常に酸化しやすいので小分けにされているものがベストです。今はまだ注目され始めなのでキャンペーンで試してみると良いでしょう。

やはり調理法としてはマリネに使ったり、朝食のロールパンにつけて食べるなどそのままの状態で摂取するべきと推奨されています。

アディポネクチンは大豆が生成を促す超善玉物質

近年、超善玉物質(コレステロールではない)と呼ばれるアディポネクチンというタンパク質が注目されています。

中性脂肪、血圧、血糖値を予防するまさに動脈硬化のためにあるような物質で、100歳を過ぎても元気なお年寄りの体を調べたところこのアディポネクチンが一般の人と比べ2倍近くあることがわかりました。

サプリメントとしても提供されていますが、タンパク質なので胃や腸で分解されてしまうため意味がないとの意見もあります。そこで注目されているのが大豆です。

大豆のタンパク質には体内でのアディポネクチンの合成を促進する効果があります。血液の老化は人の老化というように、まさに老化の防止として期待されているもので肥満や糖尿病にも有効であると言われています。

まとめ

今回わかったのは下記です。

  • 動脈硬化はほぼすべての人にあり、生まれたときから進行している
  • 血管の老化は人の老化
  • 循環器系の病気は老年期に入るとがんの死亡率をも上回る
  • コレステロールは体に必要なもので、細胞膜の構築や維持、胆汁酸の産生、ビタミンA、脂溶性ビタミンの代謝を助け、脳の神経細胞伝達の絶縁体としての役割も果たす
  • コレステロールはタンパク質にくっついて移動し、コレステロールの濃度によって役割がわかれる
  • 悪玉コレステロールは栄養として末梢神経まで作用し、善玉コレステロールは不要分を肝臓へ運ぶ
  • 悪玉コレステロールが過剰になり酸化すると、肝臓で吸収されず血中に漂い悪影響を及ぼすようになる
  • 動脈硬化とは血管の内壁が傷つき、酸化した悪玉コレステロールが侵入することがきっかけ
  • 悪玉コレステロールを退治しに入った白血球が血管の壁内に沈着し動脈硬化の原因となる
  • 拍車をかけるのは高血圧による血管内壁への負担
  • 脂肪が増えると粒子の小さい超悪玉コレステロールが作られるため、脂質の多いものはできる限り控える
  • 喫煙は悪玉コレステロールの酸化を進め、動脈硬化のリスクを高める
  • 血圧を適正に保つ減塩やカリウムを多く含む野菜、果物をとることが有効
  • 超善玉物質と言われるアディポネクチンは中性脂肪、血圧、血糖値を適正にする
  • 大豆はアディポネクチンの生成を助ける

いかがでしたでしょうか?血管の老化は体の老化、自分の体とうまく対話しながら自然に歳をとっていきたいですね。みなさんの体がいつも健康でありますように。

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