食べてもすぐにおなかが空く。食べ過ぎは仕方のないことだった?
お酒の欠かせない現代。仕事に追われ時間に追われ、机に向かい朝から晩。 働くことは生きること、そんなことは考えたくもないですが、「肥満」が生活習慣病、つまり日常生活に潜む病とまで名がつくようになったのはいつからでしょうか。
健康的な生活を意識しても、気が付くとあれこんなところにお肉が…
なかなか回避することの難しいこの肥満という症状。実は体のなかであるサイクル、悪循環が発生しているために、普通の生活に戻れなくなっているのかも?
もしそうなら、やせられないのも仕方がない。今回は肥満のメカニズムを知り、そのサイクルから抜け出す方法、日常生活の中でもできる肥満の解消法を考えます。
目次
- 肥満とは
1-1. BMI指数とは
1-2. なぜお腹ばかりが太るの? - 効果的な処方
- 肥満のデメリット
3-1. 脂肪が増えると悪玉コレステロールが…?
3-2. アディポネクチンの減少 - 肥満から抜け出せない理由
4-1. 肥満のカギを握るホルモン、インスリン
4-2. 糖と肥満の関係
4-3. インスリンの分泌によって回りだす空腹感のサイクル - 遺伝要因
5-1. 倹約遺伝子 - 肥満にならない、肥満から抜け出すために
6-1. お腹が鳴るその時、体では良きことが…!
6-2. 噛むことの大切さ
目次
肥満とは
厚労省によってあげられる4つの生活習慣病(高血圧、糖尿、肥満、脂質異常症)のうちの一つです。
肥満と認定される基準 基準はBMI指数というものが用いられるようになりました。体脂肪率は以前から指標となっていましたが、正確な測定が難しく、家庭で計ることも困難なため、現在はBMI指数が用いられることが多いです。
BMI指数とは
(体重)÷(身長)÷(身長)で算出されます。(単位はkg/m²)。BMI指数が30を超えると肥満と診断されますが、これはあくまで身長と体重の相関のみなので、筋肉質の人であったり骨格が大きい人に関した時には誤差が生じるデメリットもあります。 本当に正確な肥満度を出すには病院等で健康診断を受けることがベストです。
BMI指数を計ってみたいかたはこちらからどうぞ
<BMI計算機>
なぜお腹ばかりが太るの?
なぜ決まった場所ばかりに脂肪はついてしまうのでしょう?
脂肪がつきやすいのは主に腹部、二の腕、おしり、もも裏などですよね。これらの共通点は何か、それは日常の運動であまり使われない部位だということ、なんです!
使われない筋肉は当然衰えますし、脂肪はエネルギーが枯渇したときの非常食であるため、このようなエネルギー消費の少ない場所は保存に向いているのです。
一方、筋肉がないところに脂肪がつくわけで、それは、外からの衝撃を守るために有利に働いているという一面もあります。体は大切な内臓が外からの衝撃に耐えられるように作られている。胸部には肋骨で守られていますよね。
足や腕は比較的エネルギーを多く消費します。お腹は消費しないし、内臓を守るためにお肉をつけたい場所でもある。残念ながら、腹部は脂肪をためるには最適な場所なんですね。
効果的な処方
さて、さっそくですが肥満の解消法です。肥満に有効とされているのは
- 偏りのない健康的な食事
- 適度な運動
当たり前ですね。ただ、偏りのないというのは何に気を付けるべきかを知っていますか?お肉を食べなければいい?ご飯を食べても人は太りますね。
また、適度な運動とはどの程度の運動を言うのでしょう。有酸素運動と筋力トレーニング、それも毎日やらなくてはだめでしょうか。それを知るために、まずは肥満のメカニズムを理解しましょう。
肥満のデメリット
見た目にも悩みの種となる肥満ですが、生活就活病のもと!なんて恐ろしい話も聞きますよね。なぜ肥満がそんなに怖いのでしょうか?
脂肪が増えると悪玉コレステロールが…?
お肉を食べると、コレステロールという物質がよく話題に上がりますよね。これは、栄養素を各所に運ぶ働きをしている、実は有益な物質なのです。
ではなぜコレステロールを控えよう!なんて言われるのか。
コレステロールは、善玉と悪玉、という呼び方で分類されることが多いですね。科学的には善玉コレステロールをHDL、悪玉コレステロールをLDL、何て言ったりします。この2つの差は、コレステロールの中に、どれだけの割合でタンパク質を含んでいるかで変わります。タンパク質の割合が多いと善玉、脂肪の方が割合が多いと悪玉と呼ばれる。
悪玉コレステロールは、血管の老化とも言える動脈硬化を引き起こす原因となる。血管が老化すると、心肺機能はもちろん、肌への影響ももちろん考えられますから、見た目も中身も、若々しくいたいと思うのであれば、対策はとっておきたいものです。
<関連記事:動脈硬化って何?心疾患から老化、肌荒れまで、血管を大切にするべき理由とは>
アディポネクチンの減少
脂肪は実は体の老化を抑える大切な物質を作り出しています。アディポネクチンという耳慣れない物質。近年日本で発見され研究が進んでいる長寿や肥満にかかわる物質なのですが、この物質は血圧や血糖といった諸機能を恒常的に保つ体にとても有益な働きをします。
不思議なお話ですが、中性脂肪の量が適正であればこのアディポネクチンは多く生成され、むしろ肥満を抑制する働きをします。つまり、脂肪があると、その分肥満を抑制する。ですが、正常の範囲内であれば!のお話です。
しかし中性脂肪の量が増えすぎると、このアディポネクチンの生産は妨げられ、体脂肪の正常化のみでなく血圧、血糖値の正常化にも悪影響を与えます。
脂肪は無くてはならないものですが、ありすぎると高血圧や高血糖といった多くの障害が生まれるのです。統計からみてもやせ形でも肥満型でもなく、中肉中背の人が一番長生きするというのは有名な話ですね。
肥満から抜け出せない理由
肥満ですが、これは体の中で起こっているあるサイクル、悪循環が原因であり、それは遺伝的なものではなく、ある種の生理的反応によるものなのです。それには体内で分泌されるホルモン、インスリンが大きく関わっています。インスリン?ってなんでしょうか。まずはその役割を簡単に解説。
肥満のカギを握るホルモン、インスリン
このインスリン、簡単に言うと食事によって摂取されたブドウ糖を体の各所に「ただちにエネルギーとして吸収するように!」と指示を出すホルモンです。吸収された糖、グルコースですが、これは筋肉が運動するときに必要となるエネルギーになります。筋肉は備蓄してある糖を少しずつ使用して、運動の原動力としています。
糖の吸収を促す、そんな大切な指示を出すホルモンが、体内ではなんと、インスリン1種類しかありません。そのため重要な言葉としてこれだけ名前が広く知られているのです。
糖と肥満の関係
でもよく考えると糖って脂肪と何の関係があるのでしょう。 糖と言えばすなわち炭水化物ですね。ご飯やパンなどの主食に多く含まれるものです。脂肪は脂質、油のことではないのでしょうか。
実は体のエネルギーとして利用できる栄養素は3種類あります。それは炭水化物、脂質、タンパク質、知ってるよという方も多いと思いますが、これらは3大栄養素と言われます。そして摂取したエネルギーが余る時、それぞれ中性脂肪として蓄えられることとなります。
糖がどのように中性脂肪になるのかについてはこちらの記事で書いています。有酸素運動がなぜ大切かといったメカニズムについても書いてあるのでぜひ読んでみてください。
<関連記事:脂質・炭水化物・タンパク質、一番太る栄養素はどれ?科学的に考える、太る理由>
インスリンの分泌によって回りだす空腹感のサイクル
さぁ、筋肉たちに糖の吸収を促すインスリンですが、食事の量によって、分泌量も変わります。
人間、太る時には当然過剰に食事、つまり栄養を余分に摂取しすぎているわけですが、たくさんのブドウ糖が摂取されれば、その分多く体に吸収させなければいけませんから、比例してインスリンの分泌量も増えていきます。
すると血中のブドウ糖はいつもより速やかに筋肉へと備蓄さ血糖値は下がっていくわけですが、急激に血糖値が下がることによってヘルプを出す器官があります。それは脳!
脳がブドウ糖を栄養としていることは、頭を使いすぎて疲れて何も考えられなくなったら、アメをなめて糖分を補給しましょう!といったお話、きっとどこかで聞いたことがありますよね?
脳はブドウ糖を養分としている、そればかりか、ブドウ糖しか栄養として取り入れることができません。整理しましょう。食べ過ぎるとインスリンが過剰に分泌され、脳に届くはずだったブドウ糖まで筋肉の方へ吸収されてしまいます。するとどうなるか…下記がこのサイクルの全容です。
- 糖質の多いものを過剰に摂取することで血糖値が高まる
- 血糖値が基準値よりを超えると、体がそれに反応し血糖値を下げるインスリンというホルモンが大量に分泌される
- 血糖値が低下したことにより脳は糖質の摂取を求める →1に戻る
1~3のサイクルにより、たくさん糖質を摂取したはずなのに再び甘いものを食べたくなります。糖はどんどん筋肉に備蓄されていきますが、当然すぐに限界を迎えます。そして上限を超えた分だけ、エネルギーは脂肪として蓄えられることになる。
遺伝要因
もちろん、この生理現象を除いて他の要因もあります。食べてもあまり太らない人、食べただけ太る人というのは確かにいるのです。といっても自分の体質がどうあれ対処法は変わりませんのでこういうものもあるんだな、と思っていただければと思います。
倹約遺伝子
肥満は過酷な環境でも栄養を備蓄するために人間に必要とされて備わった能力で、その遺伝子は倹約遺伝子と呼ばれます。
1日に必要なカロリーは男性で約1500、女性で1200キロカロリーですが、倹約遺伝子型の人は一般の人と比べ200キロカロリー少なくて済む言われています。
ふつうの人と同じ食生活をしているとその分太ってしまうわけです。 日本人では3人に1人がこの倹約遺伝子型であると言われ、つまりは太りやすい体質を持っているということになります。
肥満にならない、肥満から抜け出すために
いかがでしょうか。空腹感のサイクル、思い当たる節はなかったでしょうか。なぁんだ、道理で太るわけだ、では、このサイクルから抜け出す方法を考えてみましょう。
この理屈で考えるともうお分かりかと思います。このサイクルを抜け出す最もシンプルかつ効果的な方法は「腹八分目」。
1日3食、満腹の一歩手前で止めること、それで体は正常なインスリンの分泌量を覚えます。インスリンはエネルギーの吸収だけでなく、エネルギーの消費経路にも大きく関わっており、この機能が正常になると脂肪燃焼のエネルギーの消費にも良い影響を与えます。
それができれば苦労しないよ…。腹8分目じゃ足りないんだよ…。というかた、みなさん空腹はつらいことと考えがちですが、おなかがすくって本当は悪いことではないんです。
お腹が鳴るその時、体では良きことが…!
空腹は実は体にとって良いことなのです。おなかがすくとゴロゴロと音が鳴りますね。これ、腸が自分自身のおなかの中を掃除をしている時なのです。蠕動運動と言って、栄養が少なくなると、お腹の中にまだ食べ物が残っていないか探すために腸が隅々まで掃き掃除をしているのです。
このとき、あぁ、おなかが空いてるんだ、と思ってお菓子を食べると、腸の掃除はそこで終了!となってしまいます。
口内炎や肌荒れはないですか?便秘、もしくはお腹を壊しがちではないですか?腸をきれいにすることは健康な体を手に入れるための特急券の一つです。お腹が空いているときは、今がまさに体の中がキレイになっていっている時だと思って少し待ってみてください。
体調もよくなって、インスリンの分泌も正常になる。おまけに次のご飯もよりおいしく感じることもできるようになるのでは?
噛むことの大切さ
噛むことが脳や体の健康にいいというのは有名な話ですね。ただ、せっかくおいしいものを食べるのに、噛むという行為に執着するのはなんだか少しもやもやしますので、「味わって食べる」ことを楽しむと良いと思います。
ご飯って噛むと甘みが出てきますよね。人間の舌は、味を感じる受容体の一つ一つがとても小さく、よく噛み、唾液によって多少分解されることで、本来の食べ物の味がわかるようにできています。
また、時間をかけて食べることにも大きな意味があります。胃に食物が入るとレプチンという満腹感を感じさせるホルモンも分泌されるのですが、レプチンというのはなかなか反応が遅く、食事を始めてから20分ほど経って初めて分泌されます。ゆっくり噛むことで適正な食事量で満腹感を得られるようになるのです。
友達と話しながら食べるというのも良いでしょう。楽しく食事することは副交感神経を活発にし、より質の高いサラサラな唾液を多く分泌できるようになります。
おいしい食事、楽しい食事は、これまた体に好影響を与えるのですね。
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2018年 4月 23日
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